芸も商品もサービスも客が育てる

芸(エンタテインメント的な)と芸術(アート的な)は別のものとして、あくまで「芸」についてのお話ですが。

これまで色んなものを見聞きしてきて思うのは、芸って言うのはやっぱりそれを見て評価する人によって育てられていくもんなんだな、ということ。大道芸を見ても落語を見ても、ニコニコ動画見ててもそう思う。

たとえば(これまでに何度か書いてる気がするけど)大道芸人の芸って都内で時々見かけるけど、毎度どの人もそれぞれほんとにすごいなーと思う。
技術ももちろんすごいけど、その技術をどう見せるかとか、その場にいる人をどうやって楽しませるか、どうやって足を止めてもらうか、失敗したときにどう面白くフォローするか、どうやって嫌な気分にならずに投げ銭してもらうか、全部娯楽としてきちんと磨かれてる。

あれってなんでなのかなと思うと、多分もう嫌と言うほど自分の芸の位置とか評価を目の当たりにして日々改善してるからなんだろうな、と。大道芸だったら、立ち止まってくれた人の数や投げ銭してくれた金額でもうはっきりと自分の芸の価値を思い知らされるだろうし。

落語家とか漫才師とかだったら観客にどれだけウケたのか、みたいな空気感とか、他の人に対する反応との比較とかで嫌というほど自分の芸の位置がわかるだろうし。

そうやって観客の生々しい反応を通じて「自分の芸の未熟さ、位置を思い知らされる」っていうのは、どれだけ、どういう方向に芸を磨かなきゃいけないのかを知って、試行錯誤を積み重ねていく上ですごく重要なことだと思う。

商業的な音楽シーンみたいなところにはそういう指標があまりないように思える。わかりやすい指標は多分「売り上げ」なんだろうけど、それはタイアップとかプロモーションとか、芸の質以外のところで左右されてしまって客観的な評価にならないだろうし。空気の読み方を間違えればすぐにお客さんの求めるものと違う方向に進んでしまって迷走することになってしまうだろうなと思う。

多分、ライブを繰り返すバンドがじわじわと動員増やしていくとか、ストリートライブで人が集まくるとか、そういうことをすごく地道に積み重ねていくみたいな形が本当はきっと正し(?)くて、たとえばプロがプロの目で売れる売れないとか判断するとか、そういうのは何かを狂わせてしまう、そんな気がする。きっとお客さんの喜ぶ顔だけが唯一信ずるに足る指標で、客観的に見える「数字」よりもその生々しい反応をどうやって知るか、そこが実は大事なところなんだろう、と。

以前お笑いのコアなファン(というかアマチュア芸人として舞台に立ってた人)と話をしたことがあって「テレビに出るようになると芸人ってつまんなくなるんだよねー」みたいなこと言っててそれがなんか妙に印象に残ってるんだけど、テレビみたいな観客との距離の遠いメディアは芸を狂わせる可能性をはらんでいるのかもしれない。

そしてそれは、芸だけじゃなくて、多分広告の効果に右往左往してた企業とかいろんなものにもあてはまる気がする。

ステージでも演芸場でもストリートでも同人即売会でもニコニコ動画でもustreamでもなんでもいいんだ。
とにかくお客さんの声がはっきりと聞ける、お客さんの顔がはっきりと見えるところに出て行くことが、芸を高めて皆に喜んでもらえるようなものを作っていくためには大切なことなんだろうなって。芸に限らず商売やいろんな事含めて、なんかそんなことをここのところずっと考えている。