コンテンツビジネスというもの

音楽、本、映画、マンガ、アニメ、その他諸々。世の中には様々な「コンテンツ」が溢れかえっています。そして、それに対して「ランキング」といった形でのランク付けは、頻繁に行われています。どのようなものにしてもいわゆる「ランキング」というものを見ていると、必ずしもランキングの上位にあるから質の高いものである、というわけではない、というのは誰しも気付くことだと思います。

これは、世の中の様々なコンテンツがほとんど「料金前払い制」であることに起因しているように思います。

現在の世の中の仕組みでは、コンテンツは全て「見る/聴く前に料金を払う」ことになっています。これは「見る/聴くための権利を買う」ということであるとすればとりあえずは納得できますが、よく考えてみれば妙な話ではあります。

例えば同じ3000円という金額で買った2枚のCDがあったとして、片方はとても気に入ったので何百回と聞いたとする。かたやもう一方のCDは、イマイチだったので1度聴いて飽きてもう聴かなくなったとする。

購入者にとって、前者のCDは「価値のあるもの」、後者は「価値のないもの」です。しかし、購入金額は同じ。これは何だかおかしい。

前者では支払った代金以上の価値のものを得ている(つまり、コンテンツ提供者は損をしている)し、後者は代金分の価値のものを得ていない。

本来、コンテンツの価値は、それを見終わった/聴き終わった時にようやく判断できるものであり、見る/聴く前に判断できるものではありません。

それなのに、3000円だとかいう価格がまず提示されていて、中身を十分に見せずに、「さあ、あなたはこれを高いと判断する? 買うに値すると判断する?」と判断を迫られる。
これではどうしたって「評判」だとか「知名度」だとか「アーティスト名」だとかいった前知識に頼って購入するか否かを判断せざるを得ないし、だから「派手な広告を打てば売れる」とか「タイアップすれば売れる」とかいったことが起こる。

でも、「自分で値段を決められるレストラン」みたいに、見終わった後・聞き終わった後に自分の判断で価値を決められるようなコンテンツの流通のさせ方、というのだってあってもいいと思います。これはP2Pネットワークのうまい使い方にも繋がりそうです(流通=P2P、見て/聴いて気に入ったら投げ銭とか、P2Pで落とした曲で「CD買うほどじゃないけど悪くないなこの曲」と思った曲に投げ銭とか)。
それに、こういったやり方ですと、お金がなくても「とりあえず」コンテンツを閲覧することができます。そうなれば、お金のない若い人がよいものをたくさん見て、将来的に良質なコンテンツクリエイターになる可能性も高くなるし、いい批評眼を持った批評家も育つだろうし、とりあえず「質を高める」という方向にはプラスに働くのではないかと思います。(いいクリエイターが育たない原因の一つには、いいものを見るのに高いお金が要求されるからというのがあると個人的には思う)
もちろん、自分から進んでお金を払いたい人などいるわけもなく、場合によってはただコンテンツ制作者にお金が入ってこないだけ、になる可能性もかなり高いでしょうが…。
まあ、そこまではいかなくても、少なくとも、例えば上の例の「何百回と聴いたCD」の作者に対して、余計に受け取ってしまった価値分を還元できる仕組み、みたいなものはあってもいいと思います。そういうものがあれば、少なくとも自分は利用します。実際価格以上の余剰な価値を受け取っていて何だか心苦しいコンテンツも結構ありますし。

といったことを実現する仕組みとして、「投げ銭」という仕組みはずっと欲しいと思っていました。

ただ、オンライン上でコンテンツの流通をやる場合での一番の問題点は、データの複製があまりに容易なため、別の人が作ったものを「自分が作った」として公開することが簡単すぎること。
「このコンテンツはこの人が作りました」ということを、安全確実に証明できる仕組み、というのだけは欲しいな、と、そんなことを思います。


以前、休日に繁華街で大道芸をやってるのを見たとき、もの凄く感心したのは、その芸が本当に路上で何気なく見ていいのかと思うくらい質の高いものだった、ということ。
あれは結局、「楽しんでもらえなければ缶にお金は入らない」というある種もの凄く厳しい状況の中で磨かれてきた芸だからなんだろうと思います。
投げ銭」という仕組みが、ネット上でそんな「芸を磨く」、ひいては「世の中を面白くする」ことの何か大きなキッカケになる事を祈りつつ…。